タケゴラ

鹿島アントラーズのことを書いています

カテゴリ: 2014シーズンを振り返る

・監督 トニーニョ・セレーゾ(2年目 平均採点:5.84)

 昨季はタイトル獲得はならなかったもののこの男の残したものは大きいだろう。シーズン前から「若手を使う」と宣言した通り、積極的に若手を起用。攻撃陣ではシンプルな縦に速い攻撃を徹底させ、カイオや土居といったアタッカーが開花。またシュート意識を高めさせることによってチームはリーグ最多のシュート数を記録し、遠藤が自身初の二桁得点を記録するなどリーグ最多得点を記録した。一方、守備陣も昌子や植田らが試合経験を積んで成長し、2013シーズンよりも失点を減らした。目の前の相手に厳しく寄せて自由を奪うというシンプルなやり方をこちらも徹底させたことにより、選手が迷うことなくプレーし、2013シーズンは対策が不発だった広島や浦和といった3バックの相手にも昨季は負けることがなくなった。そして、何よりシーズン前やシーズン中の徹底した練習によって選手の基礎体力をアップさせ、相手に走り負けることが少なくなったのも大きな変化である。しかし、昨季は要所での勝負弱さを露呈。若手が多かったこともあるが自らの采配で流れを変えることが出来なかったのもその要因と言えるだろう。また、ハマれば強いが戦術的な持ち札が決して多いとは言えないため、対策されると手詰まりになってしまう場面も多かった。
 今季は3年目に突入する。「チームは3年周期」と言われることやここ2季は無冠なこともあり、今季は「勝負の年」という色合いがより強くなっている。戦力アップにも成功した今季はこれまで同様若手を成長させることとそれ以上にタイトルという結果が求められるシーズンとなる。

[総括]

不安な開幕前夜
 セレーゾ体制2季目となる2014シーズンは不安に包まれた中での幕明けだった。目の前で優勝を決められた2013シーズンからの巻き返しを図るはずが、シーズン前にチーム得点王の大迫がドイツに移籍。攻撃の柱を失ったチームは一からのチーム作りを求められた。また失点の多かった守備もなかなか改善されず、PSMの福岡戦ではダヴィのハットトリックもあり勝利するが3失点、さらに開幕1週間前の練習試合の東京V戦では0-2で完敗を喫するなど、いくつもの不安材料を抱えた中で開幕を迎えることになった。

最高の滑り出し
 大雪の影響で国立競技場での開催となった開幕戦、そのピッチで若鹿たちが躍動する。豊川や昌子など5人が23歳以下という若い選手が中心となった鹿島は決して器用な訳ではないが、与えられたことを全力でやることによって甲府を圧倒。セットプレーから4得点を奪い4年ぶりの開幕戦勝利を挙げて波に乗ると、仙台を2-0、鳥栖を3-0で下し、4年ぶりにリーグ戦で単独首位に立った。その後はC大阪にこそ敗れたものの、横浜FMには先制されながらも逆転するなど再び連勝。続くホーム連戦では自滅の形で連敗を喫するが、広島戦では2013シーズンに苦杯を舐めた相手に対して対策がハマり、3-0で完勝。清水戦でも勝利し、このまま突っ走るかに思われたが、この後最初の落とし穴が待っていた。

噛み合わない歯車
 首位のまま行きたかったGWの連戦、しかし柏戦で攻撃を封じられて今季初の完封負けを喫すると、そこから徐々に歯車が狂いだしていく。続く名古屋戦では大きくスタメンを入れ替えるものの、機能せず不調の名古屋に敗戦。川崎F戦では守備陣が川崎Fの強力攻撃陣の前に崩壊。今季最多となる4失点を喫し、3連敗となってしまう。攻撃ではチャンスは作るものの決めきれない、守備では単純なミスであっさりと失点してしまう。こうした中で徳島戦は久々の勝利となったが、最下位相手にシュート26本で1点しか奪えないという不満の残る内容だった。これで立ち直ってくれればよかったがそうはいかずに、ナビスコ杯ではG大阪、神戸に連敗。9年ぶりの予選敗退に終わってしまうという結果になってしまった。そんな中で光明になったのが赤﨑と土居のコンビ。序盤戦に攻撃をけん引してきたダヴィが相手に研究され不調に陥ってしまっていただけに、この2人の連動で崩す攻撃には中断明けへの可能性を感じることの一つだった。

屈辱からの巻き返し
 初めてW杯に一人も選出されず、全員で万全の準備をして迎えた中断明け。しかし、その初戦となった天皇杯でJFLのソニー仙台相手に屈辱のPK負け。チームにも不協和音が流れ、決して状態は良くなかったが、この敗戦で、チームは己を見つめ直し再び一つになることに成功。リーグ戦中断明け初戦のF東京戦では相手にペースを握られながらも執念の猛攻で追いついてドロー。続く大宮戦もドローに終わり、迎えた首位浦和戦。チームは総力をぶつけ柴崎の同点弾で追いつくが、ここでもドロー。チームは上向きながら3連続ドローに終わ5-1り前半戦を折り返すことになった。
 そして、迎えた8月。まず広島戦ではゴールラッシュを見せて5-1の快勝、名古屋戦では終盤に逆転して連勝、甲府戦では開始早々の柴崎のゴラッソで久々の3連勝、清水戦では7年ぶりに日本平での勝利を挙げて4連勝。続くF東京戦では3人を出場停止で欠きながらなんとかドローに持ち込んで、苦手の8月を4勝1分と無敗で終えることに成功。この間は攻撃陣の好調が大きく、特に柴崎は圧巻のプレーを披露。運動量が増し、キレのある動きを見せて、得点に関わる回数が増えたため、存在感が増していった。

近づき、そして遠ざかる
 
8月の巻き返し、そして柴崎が日本代表に選出されデビュー戦で初ゴールを奪うなど、上向きな状態で臨んだ9月。大宮戦こそ敗れたものの、そこからは持ち前の攻撃に加え、守備が安定。横浜FM戦では相手をシュート1本に抑えて完封、続く仙台戦、徳島戦でも完封勝利を挙げ、3連勝3連続完封。これで一気に順位を2位まで上げ、首位浦和を射程圏内に捕えた。しかし、10月初戦の上位直接対決となったG大阪戦をATの失点で落とすと、続く柏戦も終了間際に逆転を許して、連敗。その後神戸戦をドローとして迎えた首位浦和との直接対決は先制しながらも、勝ちきれずにドロー。結局10月は1勝も出来ず、これが後々大きく響くこととなってしまった。この間は、全体的な試合運びとしては悪くないものの、凌がなければならない耐え時に失点してしまうという試合巧者からは程遠い拙い戦いぶりが目立った。

意地の追い上げの末に
 
残り4試合で首位浦和との勝点差は7。絶望的にも思われたが誰一人諦める者はいなかった。11月初戦の新潟戦は前半に圧倒されながらも、後半に少ないチャンスを活かして逆転勝ち。川崎F戦では狙い通りの守備から攻撃に繋いで快勝。C大阪戦では残留争いに苦しむチームに対して力の差を見せつけて3連勝。この時に、首位との勝点差は2にまで縮まり、最終節を前にして優勝の可能性を残すことになった。そして迎えた最終節だったが、立ち上がりに失点すると焦りからか拙攻を繰り返して敗戦。結局3位に終わり、2季連続の無冠でシーズンを終えることになってしまった。

まとめ
 
昨季は鹿島の歴史上でも珍しく4-2-3-1をベースとし、4-4-2をスタートから一度も使わなかったシーズンだった。これに象徴されるように昨季は良くも悪くも「鹿島らしくない」シーズンだったように思える。確かに攻撃の勢いは今までにないものであったし、これほどまでに若手の活躍が目立ったシーズンもなかっただろう。しかし、一方で勢い任せになって試合のペースを手放してしまうことも少なくなかった。やはり、例え相手にボールを握られても攻撃をいなし、自分たちのペースとなれば一気に畳みかけて得点を奪うしたたかさが、勝つためには求められるところだ。具体的なことに触れると、攻撃では決定率を上げるのはもちろんなこと、これまでの縦に速い攻撃だけでなく、前線でタメを作ってからの遅攻などバリエーションを増やしていきたいところだ。一方、守備ではこれまでの人に厳しく寄せる守備を継続しながらも、ラインを高く保ち、より組織でゾーンを意識した守備も導入していきたいところである。そして、何よりこれまで以上に勝利への執着心を前面に押し出しながらも、冷静さを持って戦うこと。それらの積み重ねが、悲願であるタイトル奪還につながるはずだ。

<参考>
2014シーズン 鹿島アントラーズ基本布陣
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・11 ダヴィ(リーグ戦 25試合10得点7アシスト 平均採点:5.84)

 なかなかチームに馴染めなかった2013シーズンから一転、昨季は開幕から好調をキープ。チームがカウンター中心でダヴィを活かす戦術を採用したこともあり、持ち味のフィジカルを存分に活かし、前線で相手の脅威となった。また、攻撃面だけでなく守備面でも貢献度が増し、そのチェイシングで相手からボールを奪って得点に繋げたり、セットプレーではニアサイドで高さを活かして相手のボールを跳ね返す場面も目立った。ただ、相手に引かれた時のプレーの幅の狭さとシュート精度は課題で、決定機を外す場面も少なくなかった。また、第28節で大ケガを負って離脱。昨季終盤戦を棒に振るどころか、今季前半戦の出場も難しい状況となってしまっている。まずはそのケガを治すことが今季の目標であるだろう。

・18 赤﨑秀平(リーグ戦 15試合5得点1アシスト 平均採点:5.57)

 大学NO.1FWの看板を引っさげて加入した昨季は第7節新潟戦でデビューすると、第14節徳島戦でリーグ戦初ゴールを挙げ、W杯中断明けはレギュラー候補との期待もあったが、天皇杯で負傷し離脱。復帰後はダヴィの出場停止によって先発の機会を掴み、終盤戦はそのダヴィの負傷離脱によってレギュラーとしてプレーした。武器は裏への飛び出しで、スペースを突く動きは一級品で、中盤の選手との相性も良い。ただ、5得点を挙げたとはいえ多くの決定機を外しており、またプレーが裏への抜け出し以外の選択肢が少ないため、消えてしまう場面が多く、出し手とのタイミングが合っていない場面も多かった。今季はFWのライバルが増えることになるが、スペースを作る動きも身につけ、決定力を上げたいところだ。

・19 豊川雄太(リーグ戦 17試合2得点1アシスト 平均採点:5.57)

 昨季は開幕戦で公式戦初出場初先発を果たし、第3節鳥栖戦でプロ初ゴールと最高のスタートを切った。ただ、その後は負傷もあって先発の座を失うと、途中出場でインパクトを残して先発のチャンスを得てもなかなかその機会を活かせず、先発に定着することが出来なかった。最大の武器は思い切りの良さで、積極的に仕掛け、シュートを狙う姿勢は相手にとって脅威になっていた。シュートの精度も高く、昨季決めたゴールは2つとも難しい形でのものだった。課題は、守備にパワーを使うと攻撃への切り替えが遅れてしまう点と、どうしても攻撃時に一本調子になってしまう点だろう。レギュラー奪回にはやはり攻撃でインパクトを残すのが重要なため、先の2つの課題は改善したいところだ。

・36 鈴木優磨(リーグ戦 出場なし)

 昨季途中に2種登録されたユース所属の3年生。今季のトップ昇格が決まっている。決してテクニックが優れているわけではないが、フィジカルが強く泥臭い仕事も厭わないアタッカーだ。ユースでは1トップとサイドでもプレーしていたため、トップでも同様の起用が予想される。メンタルの強さや先に挙げたフィジカルの強さはプロ向きなだけに、1年目から出場機会を掴む可能性も十分にありそうだ。

・7 ジャイール(リーグ戦 5試合0得点1アシスト 平均採点:5.38)

 開幕直後に加入したブラジル人アタッカー。テクニックを活かしたドリブルやクロスの精度は高かったが、守備と球離れの遅さがネックで、縦に速い攻撃や守備意識の高さを求めるチーム戦術に馴染めず、またカイオの台頭もあって出番が減り、W杯の中断期間でレンタル期間満了となり退団となった。

・7 ジョルジ・ワグネル(リーグ戦 8試合0得点0アシスト 平均採点:5.36)

 夏場に加入。柏時代の活躍から即戦力として期待されたが、コンディションの低さと縦に速いサッカーへの適応に苦戦。守備力の低さに加え、武器であるはずの左足の精度も欠いて、チームメイトからの信頼を得られずに終盤戦は出番を失い、昨季限りで契約解除となった。

・10 本山雅志(リーグ戦 12試合0得点0アシスト 平均採点:5.50)

 チーム屈指のファンタジスタであるこの男は昨季は特に大きなケガもなく1年間を過ごしたが、リーグ戦の出場は12試合に留まり、得点に絡む仕事はできなかった。それでも、ピッチに立てば状況を読んで的確なプレーの判断を下し、パスやドリブルでチャンスを作り出した。今季は久々のACLへの出場でこの男の経験が必要になる場面も増えるはず。まずはリーグ戦3年ぶりの得点を期待したい。

・13 中村充孝(リーグ戦 14試合2得点2アシスト 平均採点:5.68)

 鹿島での2年目のシーズンとなった昨季は確実に成長を遂げた1年であった。前半戦はなかなか試合に絡むことが出来なかったが、夏場に遠藤の負傷離脱でポジションを掴むとドリブルやスペースへの動き出しといった自分の武器をアピールして、監督からの信頼を得ることに成功。終盤戦にかけてはトップ下や1トップといった本来のポジションである中央でのプレーが多くなり、ゴール数こそ2013シーズンより減っているものの、貢献度では確実に上回った1年となった。今後の課題としては、守備での貢献度を上げることや調子の波を小さくすること、そして何よりゴールやアシストといった結果を出すことだろう。今季こそレギュラーを掴んで、攻撃の中心となりたいところだ。

・25 遠藤康(リーグ戦 30試合10得点7アシスト 平均採点:5.85)

 年々成長を続けすっかりチームの中心となった感がある。数字も昨季は自己ベストを更新し、リーグ戦では初となる2桁得点を達成。スピードはないが、当たり負けしないフィジカルと強力な左足を兼ね備えており、右サイドで起点となり隙あらばその左足からゴールを演出した。課題は調子の波が激しいこととセットプレーの精度だろう。特にセットプレーの精度は昨季終盤に低さが特に顕著になってしまっていた。CKはともかく、直接FKで相手にあまり脅威を与えられていないだけに、今季はFKでもゴールを多く決めたいところだ。

・28 土居聖真(リーグ戦 34試合8得点5アシスト 平均採点:5.91)

 2013シーズンにレギュラーポジションを掴むと昨季はさらにその才を開花させ、「恐い」選手に変貌を遂げることとなった。トップ下として武器であるドリブルを軸にアタッカーとして躍動。8得点5アシストと数字の上でも貢献度を大きく上げることとなった。また、チームが上手くいっていない時はバランスを取ってポジショニングを変え、受けてが多い攻撃陣の中で出し手の役割も担っていた。ただ、土居はやはりゴールの近くでプレーすることでこそその魅力が活きる選手だけに、今季はゴールの近くでプレーする機会を増やしたいところ。またスペースがなくなると、その恐さが減ってしまうだけに、その点も課題と言えるだろう。

・32 杉本太郎(リーグ戦 4試合0得点0アシスト 平均採点:5.25)

 ルーキーイヤーとなった昨季は第17節浦和戦でデビューし、その後リーグ戦4試合に出場した。テクニックと負けん気の強さは魅力で、昨季は監督の方針でサイドでの起用だったが、本来は中央で輝きを放つ選手だろう。ただ、決してスピードがある訳ではなくフィジカルにも難があるため、単独で局面を打開できる存在ではなく、周りの選手と連係がカギにになってくるのは間違いないだろう。また、プレーが正直すぎるため相手に読まれて対応されてしまう場面も多かった。今季は一瞬の動き出しや、スペースを作ったり、使ったりする動きを身につけて、より多くの試合に出場したいところだ。

・33 カイオ(リーグ戦 30試合8得点3アシスト 平均採点:5.75)

 昨季最大のサプライズと言えるだろう。第3節鳥栖戦でデビューすると、瞬く間に先発に定着。最初は粗さがかなり目についたが、次第にそれが少なくなり武器であるスピードやドリブル、思い切りの良さを活かして、左サイドを切り裂くアタッカーとしてチームに大きく貢献し、Jリーグベストヤングプレイヤー賞も受賞した。またミドルシュートも強烈で、PA外からのゴールも多く、相手にとってはフリーにすることの出来ない嫌な選手になっていた。課題としては状況判断の質を上げることと、スタミナ面の向上だろう。まだ無理しなくていい場面でドリブルを仕掛けたり、守備でもプレスのかけ方が不十分な部分が目立ってしまっている。また、スタミナが切れてくるとプレーの質が途端に低くなってしまうだけに、疲れてもキレのある動きが出来る体力を身につけたいところだ。

・35 野沢拓也(リーグ戦 8試合1得点0アシスト 平均採点:5.83)

 昨季は夏場に出場機会を求めて仙台に移籍。攻撃面のクオリティは高く、パスやトラップ、シュートの精度は非常に高く、アイデアも豊富だったが、運動量の少なさと守備面での貢献度の低さが鹿島ではネックとなってしまっていた。とはいえ、第5節横浜FM戦とナビスコ杯仙台戦でのゴールは間違いなくゴラッソだった。

・37 田中稔也(リーグ戦 出場なし)

 昨季途中に2種登録となったユース所属の2年生。小柄ながらスピードとテクニックを活かしたドリブルが武器で、ユースでは10番を背負いサイドアタッカーとして活躍した。今季はユースでの活躍とトップ昇格を期待したい。

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