試合前からスタジアムのボルテージは最高潮に達していた。そんな高いテンションのまま始まった試合は、序盤から激しく動いていく。3分、鹿島はカイオが金崎とのワンツーで左サイドを突破すると、グラウンダーのクロスに走りこんだ遠藤が左足で合わせてゴールネットを揺らし、待望の先制点を鹿島はわずか3分で手に入れることに成功する。しかし、喜びに浸っている時間は一瞬で打ち消されてしまう。6分、浦和に左サイドを突破されると宇賀神のクロスから高木に無人のゴールに蹴り込まれ、あっさりと同点に追いつかれてしまったのだ。
それでもこの試合の主導権を握っていたのは鹿島だった。浦和は4バックを採用し、鹿島の前線の4枚にマンマークで守るやり方を採用したが、それぞれが対人の要素でことごとく鹿島が上回ったため、鹿島は何度も相手の守備を破っていく。特に金崎の存在は圧倒的で、ルーズボールのほとんどをマイボールに変えるその力は、鹿島の攻撃に大きな力を生み出していた。また、良い攻撃は良い守備にも繋がる。鹿島はボールを奪われた直後から、前線で奪い返しにかかっていたため、浦和のビルドアップは完全に制限され、鹿島のボール奪取位置はセンターサークルより前がほとんど、と浦和の選手たちを自陣に侵入させることさえ簡単に許さなかった。それでも、なかなかゴールが生まれなかった。迎えたシュートチャンスは西川の好セーブもあって、ことごとくモノにすることができず、前半は1-1のまま終えることになった。
後半から動いたのは浦和だった。2枚の選手交代で3バックにシフト。守備で数的有利を作ることで鹿島の攻撃を防ぎ、攻撃では前線に入れたズラタンで起点を作る。これによって鹿島の攻撃は前半ほど勢いはなくなっていった。それでも、鹿島はDFラインを高く保つことで、相手をゴールから遠ざけ、また前線にボールが入った時にCBとボランチで上手く挟み込んで奪うことが出来ていたため、浦和にチャンスは作らせなかった。
すると時間の経過と共に相手の布陣変更にも慣れた鹿島が再びチャンスを作り出していく。しかし、前半と同じくことごとくそのチャンスをモノに出来ないでいると、落とし穴が待っていた。72分、宇賀神の左サイドのクロスが鹿島DFに当たって、ルーズボールになるとこれを曽ヶ端が昌子と被る形だったとはいえ、痛恨のキャッチミス。そのこぼれ球を興梠に決められ逆転を許してしまうのだった。その後、鹿島は再び猛攻に出るが最後まで浦和ゴールを破ることが出来ずに試合終了。またも浦和に勝てず、あまりにも痛すぎる敗戦を喫してしまった。
この試合は、内容だけなら鹿島が完全に上回っていたし、大量得点で勝つことも十分に可能だっただろう。それなのに落としてしまった。その要因は、様々な場面での判断ミスだろう。1失点目はマークが遅れもあるが、その中でプレッシャーがかかりきっていないにもかかわらず、DFラインを上げてオフサイドを取ろうとした昌子の判断ミスが大きく、2失点目も曽ヶ端はパンチングで逃げるという判断もアリだっただろう。また、攻撃においてはチャンスを多くは作ったものの、ドリブル、パス、シュートの判断がもう少し的確に出来ていれば、チャンスはもっと増えていただろうし、そのチャンス自体も決めるのがイージーなものに変わっていたであろう。さらに、監督の動きの遅さも悔やまれる点の一つだ。金崎やダヴィら鹿島の前線のフィジカルによって浦和守備陣は確実に消耗していただけに、そこに機動力を加えてかき回す選手交代がもっと早く出来ていれば、状況は変わっていたかもしれない。「たられば」は禁物だが、これらの判断ミスがなければ試合には勝っていただろうし、逆にこういう大一番をモノにするにはそういったミスがあっては勝てないのである。
もう十分すぎるほどの授業料は払った。タイトルが欲しければ、この授業料の元を取らないといけないのは、言うまでもなく絶対条件だ。
[試合記録]
2015明治安田生命J1リーグ 2ndステージ 第12節
2015年9月26日(土) 15:04キックオフ
県立カシマサッカースタジアム 入場者数:29030人
鹿島アントラーズ1-2浦和レッズ
[得点経過]
3分 <鹿島>遠藤康(今季6点目 アシスト:カイオ[今季4アシスト目])
6分 <浦和>高木俊幸(アシスト:宇賀神友弥)
72分 <浦和>興梠慎三
[ハイライト動画]
[データ]
鹿島 | 項目 | 浦和 |
27 | シュート | 10 |
9 | CK | 3 |
16 | FK | 14 |
3 | オフサイド | 3 |
0 | PK | 0 |
[警告・退場]
なし
[フォーメーション]
[出場記録、採点・寸評]
<鹿島>
GK
21曽ヶ端準 4.5 守備機会が少なかったが、その少ない一つで痛恨のミス。
DF
22西大伍 5 いつも以上に攻守に淡白なプレーが目立ち、ミスも少なくなかった。
3昌子源 4.5 2失点目はまだしも、1失点目のラインコントロールはあまりにも稚拙。
5青木剛 5.5 守備では安定感が光ったが、攻撃では展開力のなさを露呈。
16山本脩斗 6 ミスもなく安定していただけに、もっと使われてもよかった。
MF
20柴崎岳 5 セットプレー時の精度が、流れの中ではまるでなくチャンスメイクに至らず。
40小笠原満男 6 積極的なプレスで相手の攻撃の芽を次々と摘んでいった。
25遠藤康 6 ゴールシーンは見事だっただけに、それを繰り返してもう一本決めて欲しかった。
→MF8土居聖真(86分) - 出場時間短く、評価なし。
7カイオ 5 アシストは見事だが、多くのシーンで球離れが悪く攻撃の流れを切った。
FW
33金崎夢生 6.5 攻撃で圧倒的な存在感を示した。足りないのはゴールだけ。
11ダヴィ 5 フィジカルは脅威だったが、シュートがことごとく入らなかった。
→FW34鈴木優磨(83分) - 出場時間短く、評価なし。
監督
石井正忠 5 戦前の狙いはハマっただけに、試合中の動きが遅かったのが悔やまれる。
<浦和>
GK
1西川周作 7 MOM
DF
46森脇良太 5.5
5槙野智章 5.5
3宇賀神友弥 5.5
MF
24関根貴大 5.5
8柏木陽介 5.5
22阿部勇樹 5.5
7梅崎司 5.5
→FW21ズラタン(HT) 5
31高木俊幸 6
→MF16青木拓矢(HT) 5.5
19武藤雄樹 6.5
FW
30興梠慎三 6
→FW20李忠成(77分) 6
監督
ペトロヴィッチ 6
<主審>
西村雄一
[明治安田生命J1 2nd第12節終了時 記録]
<対戦結果>
山形 | 1-1 | 仙台 |
鹿島 | 1-2 | 浦和 |
湘南 | 1-1 | 横浜FM |
清水 | 1-5 | 広島 |
鳥栖 | 0-1 | 甲府 |
G大阪 | 3-1 | 柏 |
FC東京 | 1-0 | 松本 |
新潟 | 1-2 | 川崎F |
名古屋 | 2-0 | 神戸 |
<年間 順位>
順位 | チーム | 試合 | 勝点 | 得点 | 失点 | 得失 |
1 | 浦和レッズ | 29 | 64 | 57 | 31 | 26 |
2 | サンフレッチェ広島 | 29 | 62 | 62 | 28 | 34 |
3 | FC東京 | 29 | 56 | 39 | 27 | 12 |
4 | ガンバ大阪 | 29 | 54 | 44 | 28 | 16 |
5 | 川崎フロンターレ | 29 | 50 | 54 | 41 | 13 |
6 | 鹿島アントラーズ | 29 | 47 | 48 | 37 | 11 |
7 | 横浜F・マリノス | 29 | 45 | 39 | 28 | 11 |
8 | 湘南ベルマーレ | 29 | 39 | 34 | 36 | -2 |
9 | 名古屋グランパス | 29 | 39 | 35 | 40 | -5 |
10 | 柏レイソル | 29 | 38 | 37 | 37 | 0 |
11 | ベガルタ仙台 | 29 | 32 | 41 | 40 | 1 |
12 | ヴィッセル神戸 | 29 | 32 | 36 | 38 | -2 |
13 | ヴァンフォーレ甲府 | 29 | 32 | 21 | 35 | -14 |
14 | サガン鳥栖 | 29 | 31 | 33 | 52 | -19 |
15 | アルビレックス新潟 | 29 | 29 | 36 | 51 | -15 |
16 | 松本山雅FC | 29 | 24 | 26 | 47 | -21 |
17 | モンテディオ山形 | 29 | 21 | 21 | 43 | -22 |
18 | 清水エスパルス | 29 | 21 | 33 | 57 | -24 |
※8位の湘南以下は年間3位の可能性が消滅
※7位の横浜FMまではJ1残留が確定
<2ndステージ 順位>
順位 | チーム | 試合 | 勝点 | 得点 | 失点 | 得失 |
1 | サンフレッチェ広島 | 12 | 28 | 33 | 12 | 21 |
2 | 鹿島アントラーズ | 12 | 25 | 21 | 12 | 9 |
3 | 浦和レッズ | 12 | 23 | 18 | 14 | 4 |
4 | ガンバ大阪 | 12 | 22 | 20 | 15 | 5 |
5 | FC東京 | 12 | 21 | 15 | 9 | 6 |
6 | 川崎フロンターレ | 12 | 20 | 22 | 15 | 7 |
7 | 柏レイソル | 12 | 20 | 15 | 12 | 3 |
8 | 横浜F・マリノス | 12 | 19 | 18 | 11 | 7 |
9 | 湘南ベルマーレ | 12 | 17 | 14 | 12 | 2 |
10 | 名古屋グランパス | 12 | 17 | 17 | 22 | -5 |
11 | アルビレックス新潟 | 12 | 15 | 16 | 18 | -2 |
12 | ヴィッセル神戸 | 12 | 13 | 19 | 19 | 0 |
13 | ヴァンフォーレ甲府 | 12 | 12 | 9 | 13 | -4 |
14 | サガン鳥栖 | 12 | 11 | 11 | 20 | -9 |
15 | ベガルタ仙台 | 12 | 9 | 14 | 20 | -6 |
16 | 松本山雅FC | 12 | 9 | 10 | 22 | -12 |
17 | 清水エスパルス | 12 | 8 | 11 | 25 | -14 |
18 | モンテディオ山形 | 12 | 7 | 7 | 19 | -12 |
<CS トーナメント表> ※暫定
<ゴールランキング>
順位 | 選手名 | チーム | ゴール |
1 | 大久保嘉人 | 川崎F | 19 |
宇佐美貴史 | G大阪 | ||
3 | ドウグラス | 広島 | 16 |
4 | 豊田陽平 | 鳥栖 | 15 |
5 | クリスティアーノ | 柏 | 12 |
6 | 武藤雄樹 | 浦和 | 11 |
大前元紀 | 清水 | ||
佐藤寿人 | 広島 | ||
9 | 興梠慎三 | 浦和 | 10 |
武藤嘉紀 | FC東京 |