鹿島アントラーズ 公式@atlrs_official【お知らせ】トニーニョ セレーゾ監督 解任について
2015/07/21 17:30:58
http://t.co/cIXpOqOiUl
今季の成績を総合的に考慮したうえで、契約解除を決定しました。
#antlers #kashima
鹿島アントラーズ 公式@atlrs_official【お知らせ】石井正忠コーチの新監督就任について
2015/07/21 17:31:52
http://t.co/aPcFN48DxS
本日7/21付けで、新監督就任が決定しましたので、お知らせいたします。
#antlers #kashima http://t.co/gNvLWdKf61
[第2次トニーニョ・セレーゾ政権下での成績]
<2013>
・リーグ戦:5位 勝点59 18勝5分11敗 60得点52失点
・ナビスコ杯:ベスト8
・天皇杯:ベスト16
※スルガ銀行杯優勝
<2014>
・リーグ戦:3位 勝点60 18勝6分10敗 64得点39失点
・ナビスコ杯:予選リーグ敗退
・天皇杯:2回戦敗退
<2015> ※2nd第3節終了時
・リーグ戦(年間):20試合 8位 勝点26 7勝5分8敗 30得点29失点
・リーグ戦(1st):17試合 8位 勝点22 6勝4分7敗 27得点25失点
・リーグ戦(2nd):3試合 11位 勝点4 1勝1分1敗 3得点4失点
・ACL:グループステージ敗退
※ニューイヤー杯優勝
①トニーニョ・セレーゾ監督就任の経緯と2014シーズンまで
上記の通り、トニーニョ・セレーゾ監督(以下セレーゾ)の解任、石井正忠コーチ(以下石井新監督)の新監督就任が7/21付で発表された。その本質については後程として、まずは昨季までを振り返ってみたい。
そもそも、セレーゾが招聘されたのは、世代交代を進めるという明確な目的があったからである。オリヴェイラ体制終盤は主軸の衰えが見え始め、ジョルジーニョもその課題を解決できず、満足な結果も残せない中、家庭の事情で1年での退任となってしまった。そうした中で、79年組など当時の主軸であった選手たちを育て上げ、かつ結果も残してきたセレーゾに白羽の矢が立ったのだ。
こうした中で、再び鹿島を指揮することになったセレーゾはまずはベテラン中心でチームを構成することを選択。中田、ジュニーニョら昨季まで先発の機会が減っていたベテランを起用して、戦術の早期浸透を図った。こうしてチームは昨季を考えればまずまずの成績で上位に位置していた。そして、夏場になってベテランの運動量に陰りが見え始め、連日の居残り練習などで若手が力をつけつつあった状況で、岩政や野沢を外して、山村や土居といった若手を起用。DFラインを高く保ち、ビルドアップと機動力を強化した攻撃的なサッカーに舵を切った。これによって、攻撃力アップに成功。特に、エースとなった大迫の活躍は目覚ましく、飛躍的なペースで得点を重ねた。しかし、一方で守備の安定感に欠け、アウェイ7連敗や終盤戦の優勝争いで弱さを見せ、結果として5位に終わり、7年ぶりの無冠となってしまった。
2年目も逆風の中でのスタートだった。岩政、大迫という攻守の柱が抜け、補強も満足に進まなかった。そこでセレーゾは昨年から育ててきた若手中心の構成にシフト。リーグ戦開幕戦のスタメンには伊東、昌子、柴崎、豊川、土居と23歳以下の選手が5人揃うほどであった。しかし、この選択が功を奏す。序盤戦の対戦相手に恵まれたこともあるが、守備を意識して引き気味に構えながら、前線のダヴィの突破力を活かすカウンターサッカーに選手たちを専念させたことで、やるべきことが明確になったのが大きい。チームは4年ぶりにリーグ戦で首位にも立ち、特に大迫というエースが抜けながら、多彩なフィニッシャーを揃えた攻撃陣はリーグ戦最多得点を記録した。しかし、この年も終盤まで優勝争いに絡みながら、大事な試合でミスが目立ち、直接対決を落として、3位。2年連続で無冠に終わってしまった。
②今季のここまで
そうして迎えた今季、セレーゾ体制3期目ということもあり、「勝負の年」という思いは尚更強かった。その思いにこたえるかのように、開幕前は順調な仕上がりぶりを披露。即戦力も多く獲得し、期待感は強かった。しかし、ACLでは開幕3連敗、リーグ戦でも開幕3試合勝ちなしとスタートダッシュで躓くとそれを最後まで取り戻せなかった。ACLは4月の劇的な連勝で決勝Tに望みをつないだが、最終戦のFCソウル戦では課題だったセットプレーの守備を修正できずに敗れ、敗退。リーグ戦も4月はやや巻き返した感があったものの、勝負所でのミスや金崎以外の新戦力が思うように活躍できない、若手が昨季ほどの存在感を示せない、ということもあり戦いぶりが安定せず、結果1度も連勝がないまま1stステージを終えた。反撃のチャンスである2ndステージも、柴崎不在も響きここまで1勝1分1敗と自分たちより下位のチームに取りこぼしが続き、内容の改善もみられなかった。
③問題は何か
ではなぜ、今季はここまで勝てなくなってしまったのだろうか。一番大きな理由として考えられるのは、他クラブのスカウティングによって鹿島の弱点が表面化してしまったことだろう。それは攻守両面にある。
攻撃面の弱点は、パターンの無い攻撃とビルドアップの質の低さである。鹿島の攻撃は基本的に前線のコンビネーションによるカウンターとボランチを中心とした崩しである。そのため、前線(特に2列目)には個で打開できるアタッカー、ボランチには攻撃の起点となるパスセンスが求められた。しかし、カウンターにおいては前線に渡った時は個人のアイデアに依存しており、特にチームで決められた攻撃パターンが少なすぎるのである。これは相手にとってはどうやって攻めてくるのか読みづらいという長所もあるが、個々の調子がチームに大きく影響する、攻撃を塞がれた時に立ち返る場所が存在しないという弱点もある。ACLとの両立で過密日程を強いられ、メンバーが頻繁に変わっていた今季はこの弱点が余計に響いてしまった。
また、ビルドアップをボランチに依存していたのも大きな問題であった。鹿島は最終ラインがボールを持つと、基本的に展開力のあるボランチの柴崎と小笠原にとりあえず預けて、そこから攻撃を展開していた。確かに2人の展開力はJリーグでもトップクラスだが、裏を返せば対戦相手は柴崎と小笠原を自由にさせなければいいわけで、事実2人をケアしてくるチームは今季になって増えた。そうなると、ビルドアップは途端に滞ってしまった。SBが基本的に位置取りの高い鹿島は、CBがボールを持つ機会が多いのだが、CBのパス能力が高いとは言えないため、そこからチャンスに繋がるパスが出されることはほとんどなかった。また、受け手の動き出しも裏に抜けるばかりで単調なため、出しどころがないことが多く、トップ下の土居が降りてくることが多くなってしまった。一時的にアバウトな長いボールを入れてもマイボールにしてくれるジネイが入ったことで、改善の兆しが見られたが、ジネイは長期離脱、同じようなプレースタイルの高崎はセレーゾの信頼を得ることが出来なかった。その中で、頼みの柴崎が離脱してしまえば、その課題が顕著になるのは当然である。
守備面の課題は攻撃面と重なる部分もある。一つは絶対的なボランチの守備力の低さだ。ビルドアップを重視するため、攻撃力のある選手を起用しているため、中盤にフィルター役となる選手がおらず、高い位置でボールを奪えないのだ。特に、小笠原の運動量の低下は痛い問題であった。鹿島は高い位置取りとなるSBの裏のスペースをボランチがカバーするのだが、小笠原がそこをカバーするだけの運動量がなく、そこを狙われることが多かった。運動量の多い山本、カバーリングの上手い昌子の存在などで何とか昨季はカバーできていたが、今季になって小笠原の好不調の波が大きくなると、いよいよカバーしきれない場面も出てきてしまったのである。また、前線からのプレスが機能しなかったのも守備陣にとっては大きな負担になっていた。攻撃面と同様に、前線の選手たちは守備面も個々の判断に任されている部分が大きく、各々が自分の判断でプレスをかける場面が目立ち、それはとても連動性があるとは言えないものだった。メンバーによって貢献度も違うため、それが高さや強さに自信があるとは言えない守備陣には耐えきれず、失点につながってしまう部分も多かった。
こうした問題をセレーゾは最後まで改善することが出来なかった。むしろ選手個々の判断に頼る部分が大きくなってしまい、鹿島の武器であるはずの「一体感」を感じることは出来なくなっていた。試合中の采配のまずさはともかく、練習も同じメニューの繰り返しでは、そういう流れになってしまうのも頷けるだろう。また、今季はメンバー変更がハマらなかったのも痛かった。リーグ戦の清水戦や甲府戦のようにターンオーバーに踏み切った試合で、ことごとく勝てなかったことが選手の不信感を増大させてしまったのは否めないだろう。これはあくまで筆者の個人的な印象だが、昨季に比べて今季はゴールが決まった後に、セレーゾの下に走っていく選手が少なかったように思える。
④まとめ
今季のここまでの成績、特に2ndステージの取りこぼしを考えれば、監督交代は妥当な判断であろう。今なら、まだすべてのタイトルを獲得するための巻き返しは十分可能であるし、このままセレーゾが続投してケガ人が復帰しても、チーム状態が劇的に上向くことは考えづらいからだ。
しかし、石井新監督になってチームが劇的に変わるとも考えにくい。むしろ、現状では長年チームを見てきたとはいえ、監督経験ゼロの石井新監督の手腕に不安を抱く部分が大きいのは否めないからだ。さらに、元々鹿島はある程度スタイルが定められ、その中で監督が選手たちの特徴に合わせて、独自のエッセンスを加えていく形が確立されており、他クラブのそれとは少し異なる意味を持つからだ。監督交代という劇薬は7月の2試合には響くだろうが、長くは続かない。石井新監督の手腕と選手たちの変化次第なのだ。とりあえず、石井新監督には上記の問題の修正を期待したいところである。
選手たちは、今回の件を受けて責任を感じて、奮起してくれることは間違いないだろうし、そうでなければ困る。その中で求めたいのは、状況判断力の向上だ。今までの選手たちはここに状況判断を委ねられていた部分が大きかったにもかかわらず、的確な判断が出来なかったことがあまりにも多すぎた。そのため、同じミスを何度も繰り返してしまう場面が多すぎたのである。場面場面で何が自分に求められているのか、相手は何を狙っているのか、自分の悪かった部分は何なのか、改めて過去を振り返ることでそれを検証し、ピッチでは自分たちと相手をよく観察することを、改めて徹底してほしいものである。その結果を選手同士ですり合わせていくことが出来れば、自然とコミュニケーション力も高まり、一体感も高まるだろう。少なくとも、自分本位のプレーは減るはずだ。そうした点が改善できれば、今のチームならもっと勝てるだけのチーム力は持っている。
最後に、難しい状況でチームを引き受け、結果こそ出なかったが多くの若手を育て上げ、ピッチに立てる状態まで引き上げてくれたセレーゾに感謝したい。Cerezo,muito obrigado!