いったい誰がこの試合展開を予想できただろうか。今季のリーグ戦2試合ともG大阪に敗れているのが考えられないほど、鹿島のパフォーマンスは力強く、一方的なものだった。

 立ち上がりから、鹿島は主導権を完全に掌握した。2トップをサイドに走らせて、そこにボールを入れて起点を作り、そこに人数をかけて崩していく。ボールを奪われても、すぐにプレスをかけてセカンドボールを拾って、二次、三次攻撃へと繋げていく。特に鹿島の右サイド、G大阪の左サイドでその形を多く作ることによって、G大阪のストロングである宇佐美と遠藤保の脅威を取り除くことに成功。こうして、ハーフコートゲームをしているかのように鹿島は攻め続けた。しかし、中々肝心のゴールが奪えない。決定機を作っても、G大阪守備陣の最後の粘りの前に結局前半はゴールネットを揺らせず、前半をスコアレスで折り返した。

 後半の立ち上がりは鹿島のペースが若干落ちたこともあり、G大阪がチャンスを作り出す。しかし、そこをチーム全体で耐え凌ぐと、鹿島に歓喜が待っていた。60分、小笠原の左CKにドンピシャで合わせたのは、これが移籍後初ゴールだったファン・ソッコ。ついにG大阪の壁を打ち破った鹿島は、その後も攻め急ぐこともなく、かといって守りに入ることもなく、途中出場の選手も使いながら確実に時計の針を進めていく。すると、84分に再び小笠原の左CKから、鈴木優が折り返したボールを金崎がヘッドで押し込み決定的な2点目が鹿島に入る。さらに、その2分後にはカウンターから抜け出したカイオがGKとの1対1を冷静に制して3点目。2点目で緊張の糸が切れたG大阪にさらに追い打ちをかけるような1点だったのは間違いない。

 その後、確実に試合を終わらせた鹿島は、終わってみれば戦前の希望以上の結果と内容で6度目の聖杯を獲得。17度目のタイトルを手に入れ、再び「常勝軍団」と呼ばれるような勝負強さを身に着け、残り2試合となったリーグ戦にも繋がる優勝となった。

[試合記録]
2015Jリーグヤマザキナビスコカップ 決勝トーナメント 決勝
2015年10月31日(土) 13:05キックオフ
埼玉スタジアム2002 入場者数:50828人

鹿島アントラーズ鹿島アントラーズ3-0ガンバ大阪ガンバ大阪

[得点経過]
60分 <鹿島>ファン・ソッコ(今大会1点目 アシスト:小笠原満男[今大会2アシスト目])
84分 <鹿島>金崎夢生(今大会5点目 アシスト:鈴木優磨[今大会1アシスト目])
86分 <鹿島>カイオ(今大会2点目 アシスト:柴崎岳[今大会1アシスト目])

[ハイライト動画]


[データ]
鹿島項目G大阪
24シュート5
12CK2
15FK14
1オフサイド0
0PK0

[警告・退場]
25分 <G大阪>今野泰幸(警告)
87分 <鹿島>カイオ(警告)
89分 <G大阪>パトリック(警告)
90分 <G大阪>大森晃太郎(警告)

[フォーメーション]
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[出場記録、採点・寸評]
<鹿島>
GK
21曽ヶ端準 6.5 ほとんど仕事はなかったが、シュートストップ、キック共に確実だった。
DF
22西大伍 7 右サイドを制圧して、宇佐美に仕事をさせなかった。
14ファン・ソッコ 8.5 積極的な対応からインターセプト連発。値千金のゴールも。
3昌子源 8 強気のライン設定で歓喜を呼び込む。パトリックとの競り合いも完勝。
16山本脩斗 7 バランスを取りながらも、前に出ていくタイミングが絶妙だった。
MF
20柴崎岳 7.5 高い位置で攻撃の舵取りを担う。守備でも光り、アシストも残した。
40小笠原満男 9 全得点に絡む活躍。球際の強さはまさに「鬼神」。 MOM
25遠藤康 7 立ち上がりから攻勢を続けられたのは、この男のタメがあってこそ。
→MF7カイオ(66分) 7.5 終盤のこの男ほどイヤらしいものはない。トドメの3点目も。
13中村充孝 7 変幻自在。守備もサボらず、チャンスに絡み続けた。
→FW34鈴木優磨(69分) 7 アシストのようなフィジカル面だけでなく、足元の巧さも見せた。
FW
33金崎夢生 7.5 相変わらずの献身ぶり。勝負を決める2点目も。
18赤﨑秀平 6.5
決定機は逃したが、守備やポストプレーで貢献度大。
→DF4山村和也(81分) - 出場時間短く、評価なし。
監督
石井正忠 10 試合前の仕込み、試合中の的確な対応と、文句なしの采配。

<G大阪>
GK
1東口順昭 5.5
DF
14米倉恒貴 4.5
3西野貴治 5.5
→DF8岩下敬輔(30分) 3.5
5丹羽大輝 4
4藤春廣輝 4
MF
15今野泰幸 4
7遠藤保仁 4.5
13阿部浩之 5
→MF19大森晃太郎(65分) 4.5
39宇佐美貴史 5.5
11倉田秋 5.5
→FW9リンス(78分) 5
FW
29パトリック 4
監督
長谷川健太 4

<主審>
家本政明

[トーナメント表]
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