17冠を目指す鹿島と、初タイトルを目指す神戸。タイトルへの挑戦権を懸けたこの試合は、立ち上がりからピッチのあらゆる所で激しい競り合いが見られた。その中でも、鹿島は連戦の中だったがセカンドボールの競り合いでことごとく先手を握り、相手にボールを持たされても落ち着いて対応するなど悪くない立ち上がりを見せた。そうした中で、16分に試合が動く。鹿島はスローインの流れから、遠藤のパスを赤﨑がPA内で上手くフリーになってボールを受けると、中村に折り返す。フリーで待っていた中村は難なくボールをゴールに流し込み、鹿島がトータルスコアで2点差とより優位な立場に立つことに成功した。

 しかし、優位な時間も1プレーであっという間に変わってしまった。21分、神戸の岩波からDFラインの裏にボールを出されると、昌子が反応した増山にあっさりとかわされてしまい中に折り返される。これを渡邉になんなく決められて、リードは試合前と同じく1点差に戻ってしまった。さらに、ここから一度受けてでも試合を落ち着かせたい守備陣と、引き続き前線からプレッシャーをかけていきたい攻撃陣との間で守備の考え方に違いが生じてしまう。これによって鹿島の陣形は間延びしてしまい、またその間に立ったボランチが中途半端な位置取りになってしまい、鹿島は守備の人数が足りなくなってしまうことが多くみられるようになってしまった。こうして畳みかけて追いつきたい神戸が一気に攻勢をかけていく。3バックやボランチからDFラインの裏に何度もロングボールが蹴られ、そのたびに鹿島は後手の対応を強いられていく。渡邉や石津に何度も決定機を作られるが、曽ヶ端を中心とした守備陣が最後の粘りを見せて、何とか凌ぎ切ることに成功。前半は1-1で終え、鹿島としてはここで耐えたことが後半に繋がることになった。

 後半も追いつきたい神戸に攻め込まれるが、鹿島は1プレーで流れを変えることになる。53分、鹿島はCKのこぼれ球から山本のパスに抜け出した赤﨑がシュート。これは徳重に弾かれるが、詰めていた金崎が押し込んで鹿島は大きな追加点を手に入れる。この1点は鹿島を精神的にかなり楽にしたことは間違いないだろう。再び2点のビハインドとなった神戸は前がかりになって攻めに出るが、前半とは違って守備意識を統一した鹿島は落ち着いて対応。逆にカウンターの嵐を神戸に浴びせていく。

 こうして、180分の戦いの終盤は鹿島の独壇場になった。74分には、岩波のクリアミスを金崎がPA内で拾って落ち着いて決めて、勝負を決定づけると、82分には裏へのパスに反応したカイオがDFをかわして決めてトドメを刺した。結局、トータルスコアは6-2と力の差を示した鹿島が3年ぶりの決勝進出を決めた。

 前半の劣勢は確かに課題だろう。ナビスコ杯決勝に限らず、これからの戦いではそうした意見のズレや問題点を早めに修正できないと命取りになってくる。また、守備陣につまらないポジショニングなどのミスが相次いだのも注意したいポイントだ。ただ、カウンターで効果的に得点を重ねられた点はここ最近の試合であった決定力の低さを解消するような点と言えるだろう。V字回復を見せ続ける鹿島は、いよいよ17冠まであと1勝に迫った。

[試合記録]
2015Jリーグヤマザキナビスコカップ 決勝トーナメント 準決勝 第2戦
2015年10月11日(日) 14:04キックオフ
県立カシマサッカースタジアム 入場者数:10801人

鹿島アントラーズ鹿島アントラーズ4-1ヴィッセル神戸ヴィッセル神戸

<2戦合計>
鹿島アントラーズ鹿島アントラーズ6-2
ヴィッセル神戸ヴィッセル神戸

[得点経過]
16分 <鹿島>中村充孝(今大会1点目 アシスト:赤﨑秀平[今大会1アシスト目])
21分 <神戸>渡邉千真(アシスト:増山朝陽)
53分 <鹿島>金崎夢生(今大会3点目)
74分 <鹿島>金崎夢生(今大会4点目)
82分 <鹿島>カイオ(今大会1点目)

[ハイライト動画]


[データ]
鹿島項目神戸
16シュート9
9CK8
16FK11
3オフサイド0
0PK0

[警告・退場]
54分 <神戸>安田理大(警告)
60分 <鹿島>曽ヶ端準(警告)
61分 <神戸>岩波拓也(警告)
90+1分 <神戸>高橋祥平(警告)

[フォーメーション]
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[出場記録、採点・寸評]
<鹿島>
GK
21曽ヶ端準 7 前半の劣勢を好セーブの連発で耐え抜き、後半に繋げた。 MOM
DF
22西大伍 4.5 自身の裏のスペースのケアがあまりにも甘く、何度もピンチを招いた。
14ファン・ソッコ 5.5 軽い対応が多く、ケガ明けが影響したか味方との連係も悪かった。
3昌子源 4 失点に絡んだシーン以外にも、不用意なミスが多すぎた。
16山本脩斗 6 裏を突かれるシーンもあったが、インターセプトなどから2得点に絡んだ。
MF
4山村和也 5.5 パスカットなど持ち味は見せたが、ポジショニングが曖昧な場面も。
→MF27梅鉢貴秀(85分) - 出場時間短く、評価なし。
40小笠原満男 5.5 裏を突いたパスは光ったが、運動量が少なくプレー範囲は狭かった。
25遠藤康 5.5 パス精度は高かったが、運動量が落ちて前に出れない場面も。
→MF7カイオ(68分) 6.5 圧倒的なスピードがカウンターで活きた。ダメ押しのゴールも。
13中村充孝 7 得点シーン以外も、細かいタッチで何度もチャンスに絡んだ。
→FW19豊川雄太(81分) - 出場時間短く、評価なし。
FW
33金崎夢生 7 流石に運動量は落ちていたが、それでも前線で起点になって2ゴール。
18赤﨑秀平 6.5
ことごとく競り合いに勝って、攻撃の起点に。ゴールだけが足りなかった。
監督
石井正忠 6 HTできっちり修正したが、前半のうちにやっておきたかった。

<神戸>
GK
30徳重健太 5
DF
6高橋峻希 5.5
5岩波拓也 5
24三原雅俊 5.5
8高橋祥平 4
31安田理大 5.5
MF
20増山朝陽 6.5
→FW29田代容輔(67分) 5
32前田凌佑 6
10森岡亮太 5.5
9石津大介 4.5
→MF17田中英雄(86分) -
FW
19渡邉千真 6
監督
ネルシーニョ 5.5

<主審>
扇谷健司

[ナビスコ杯 準決勝第2戦終了時 記録]
<対戦結果>
G大阪2-0新潟
鹿島4-1神戸

<2戦合計>
G大阪3-2新潟
鹿島6-2神戸

<トーナメント表>
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