鹿島としては、前半は守備がハマったことが主導権を呼び込んだ要因であろう。CBで興梠に自由を与えず、SBは中に絞って中央のスペースを消す、ボランチは守備時はシャドーにマンマークで仕事をさせない。この各々の仕事を確実にこなしたことに加え、何よりも大きかったのは前線に入ったジネイのプレスだろう。確実にパスコースを塞ぎ、スキあらばボールを奪いに行くこの姿勢に、浦和守備陣はいつものビルドアップを満足にさせてもらえなかった。それによって、鹿島がピッチの中央付近でボールを奪うシーンは前半に何度も見られたのである。
しかし、このチャンスを得点に結びつけられなかった。いや、得点どころかビッグチャンスも思うように作れなかったのである。ボールを奪っても鹿島の攻撃はギアを上げることが出来ず、浦和に帰陣を許し、結果として横パスが多くなってゴールに迫れなくなってしまったのである。ジネイがポストプレーでは抜群の安定感を見せていただけに、シンプルにジネイを使ってそのセカンドボールや、裏のスペースを狙っていく方法もあったはずだが、残念ながらそうした動きは見られず、これが後々に響くことになる。
後半になると、修正を加えて運動量の増えた浦和も徐々にペースを掴みだす。しかし、鹿島も譲らず、試合は激しい展開ながらもやや膠着した状態になっていた時だった。67分、鹿島はピッチ中央右サイドでボールを持った柴崎が前線にロングボールを入れると、これにジネイと競り合った森脇のクリアが西川の頭上を越え、そのままゴールに吸い込まれ、鹿島が思わぬ形で先制に成功する。鹿島としては願ってもない形で手に入れた先制点であり、これで前がかりになる浦和の攻撃を凌いで、カウンターを発動して追加点を狙えばいいはずだった。
しかし、そのわずか4分後だった。浦和陣内でカイオが競ったボールが浦和に渡ると、浦和のカウンターが発動する。これに鹿島は完全に対応が遅れ、プレスも帰陣も一瞬怠ってしまった。その一瞬が命とりだった。浦和は素早くパスを繋ぐと、右サイドを抜け出したズラタンに展開。このズラタンのクロスに、最後はフリーになっていた武藤が押し込み、鹿島はあっさり追いつかれてしまう。さらに、83分に悪夢は続いた。自陣でキープしようとしたジネイに浦和がすばやく囲んでボールを奪うと、森脇が左サイドの関根にスルーパス。受けた関根は植田をかわして、豪快に蹴り込んで鹿島はあっさりと逆転されてしまった。ここから鹿島に反撃する力は残っておらず、このまま試合終了。鹿島は痛すぎる逆転負けを喫することになってしまった。
トータルで見れば、浦和にやられた場面は失点シーンだけだった。鹿島としては「内容は悪くない」試合だったのだ。ではなぜ、勝てなかったのか。そこが、今の浦和と鹿島の質の差であるのだろう。2つの決定機を確実に決めた浦和、ペースを握りながらゴールはラッキーなオウンゴールのみだった鹿島、主導権を握られながらチャンスを作らせなかった浦和、2度のピンチを防げなかった鹿島。この「わずかな」の質の差が勝敗に直結し、今の順位にも繋がっているのだろう。この質を上げていくことに注力するのか、今のサッカーをあきらめてスタイルを変えるのか、選択するのは自分たち次第だが、いずれにせよこういった細部にこだわってレベルアップしなければ、上位進出など望むべくもない。
[試合記録]
2015明治安田生命J1リーグ 1stステージ 第13節
2015年5月23日(土) 19:04キックオフ
埼玉スタジアム2002 入場者数:41269人
浦和レッドダイヤモンズ2-1鹿島アントラーズ
[得点経過]
67分 <鹿島>オウンゴール
71分 <浦和>武藤雄樹(アシスト:ズラタン)
83分 <浦和>関根貴大(アシスト:森脇良太)
[ハイライト動画]
[データ]
浦和 | 項目 | 鹿島 |
14 | シュート | 13 |
1 | CK | 6 |
12 | FK | 19 |
0 | オフサイド | 2 |
0 | PK | 0 |
[警告・退場]
44分 <浦和>宇賀神友弥(警告)
75分 <浦和>那須大亮(警告)
90+2分 <浦和>武藤雄樹(警告)
[フォーメーション]
[出場記録、採点・寸評]
<鹿島>
GK
1佐藤昭大 5.5 2失点とも相手を褒めるべきだが、やや判断に迷いも。
DF
22西大伍 5.5 前半の攻撃力は高かったが、後半は失点シーンで帰陣が遅れた。
23植田直通 5 ロングキックなどで貢献したが、2失点目は関根にかわされた。
14ファン・ソッコ 5.5 前半は興梠封じに成功したが、後半はラインが下がり苦しくなった。
3昌子源 5.5 攻撃での貢献度は高くなかったが、1対1はことごとく制した。
MF
20柴崎岳 5.5 攻撃の起点となりオウンゴールも誘ったが、まだパスミスが目立つ。
40小笠原満男 5 前半から素早いパス回しを見せたが、終盤はボールロストが多かった。
25遠藤康 5 ボールタッチの回数は少なくなかったが、ゴールに迫る動きはなかった。
→FW15高崎寛之(89分) - 出場時間短く、採点不能。
7カイオ 4.5 突っかけては奪われる場面が多く、判断も悪かった。
→MF13中村充孝(79分) 5 ミスもあって、流れに上手く乗れなかった。
8土居聖真 5 ジネイが収めてくれるのだから、もっとシュートチャンスに絡みたい。
→MF33金崎夢生(67分) 5 迫力あるドリブル突破を見せたが、一本調子過ぎる。
FW
9ジネイ 6 前線での存在感は絶大だったが、終盤は明らかにガス欠だった。
監督
トニーニョ・セレーゾ 5.5 プランニングとしては悪くなかったが、ジネイは引っ張りすぎたか。
<浦和>
GK
1西川周作 6
DF
46森脇良太 6
4那須大亮 5.5
5槙野智章 6.5
MF
24関根貴大 6.5 MOM
8柏木陽介 6
→MF16青木拓矢(84分) -
22阿部勇樹 6
3宇賀神友弥 5
→MF7梅崎司(77分) 6
20李忠成 5
→FW21ズラタン(61分) 6.5
19武藤雄樹 6.5
FW
30興梠慎三 6
監督
ペトロヴィッチ 6.5
<主審>
木村博之 6 位置取りが良く、発生した事象に的確に対応した。
[明治安田生命J1 1st第13節終了時 記録]
<対戦結果>
山形 | 0-1 | 神戸 |
湘南 | 4-0 | 清水 |
仙台 | 0-1 | 甲府 |
浦和 | 2-1 | 鹿島 |
FC東京 | 0-1 | 名古屋 |
川崎F | 3-2 | 鳥栖 |
松本 | 0-3 | 横浜FM |
広島 | 4-2 | 新潟 |
柏 | 6/23開催 | G大阪 |
<順位> ※第13節暫定
順位 | チーム | 試合 | 勝点 | 得点 | 失点 | 得失 |
1 | 浦和レッズ | 12 | 30 | 23 | 10 | 13 |
2 | サンフレッチェ広島 | 13 | 26 | 19 | 11 | 8 |
3 | ガンバ大阪 | 11 | 23 | 17 | 9 | 8 |
4 | 横浜F・マリノス | 13 | 23 | 18 | 11 | 7 |
5 | FC東京 | 13 | 23 | 15 | 13 | 2 |
6 | 川崎フロンターレ | 13 | 21 | 23 | 18 | 5 |
7 | サガン鳥栖 | 13 | 19 | 18 | 17 | 1 |
8 | 湘南ベルマーレ | 13 | 18 | 15 | 17 | -2 |
9 | 名古屋グランパス | 13 | 17 | 16 | 15 | 1 |
10 | ヴィッセル神戸 | 13 | 16 | 15 | 16 | -1 |
11 | 鹿島アントラーズ | 12 | 15 | 17 | 17 | 0 |
12 | 松本山雅FC | 13 | 15 | 13 | 16 | -3 |
13 | ベガルタ仙台 | 13 | 13 | 18 | 19 | -1 |
14 | 柏レイソル | 11 | 13 | 14 | 15 | -1 |
15 | モンテディオ山形 | 13 | 12 | 10 | 14 | -4 |
16 | ヴァンフォーレ甲府 | 13 | 12 | 6 | 20 | -14 |
17 | 清水エスパルス | 13 | 10 | 15 | 24 | -9 |
18 | アルビレックス新潟 | 13 | 10 | 14 | 24 | -10 |
<ゴールランキング> ※第13節暫定
順位 | 選手名 | チーム | ゴール |
1 | 宇佐美貴史 | G大阪 | 10 |
豊田陽平 | 鳥栖 | ||
3 | 大久保嘉人 | 川崎F | 9 |
4 | 武藤嘉紀 | FC東京 | 8 |
5 | 大前元紀 | 清水 | 6 |
6 | レナト | 川崎F | 5 |
ラファエル・シルバ | 新潟 | ||
8 | ウイルソン | 仙台 | 4 |
武藤雄樹 | 浦和 | ||
関根貴大 | 浦和 | ||
工藤壮人 | 柏 | ||
杉本健勇 | 川崎F | ||
高山薫 | 湘南 | ||
永井謙佑 | 名古屋 | ||
小川慶治朗 | 神戸 | ||
ドウグラス | 広島 |
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