前半は完璧と言っていい内容だった。大宮の採用する3バックが鹿島に噛み合わないせいか、プレスが単発でしかかからず、特に小笠原と柴崎のビルドアップに優れたボランチ2人が自由にパスを出せる状態になっていたのだ。こうなると縦パスが面白いように入り、そこから土居が前を向いて仕掛けることも出来たし、サイドに展開すること出来るという風に選択肢が増え、攻撃が活性化した。守備でも相手が苦し紛れにズラタンとムルジャ目がけて放り込んでくるロングボールを、植田と昌子がことごとく跳ね返した。こうして主導権を握った鹿島はダヴィと土居がそれぞれ決定機をモノに出来ない場面はあったものの、34分にCKのサインプレーから最後はダヴィの反転シュートで先制。相手のシュートも0に抑え込むという、文句のつけ難い形で前半を終えた。

 しかし、後半になると流れが変わり出す。そのきっかけの一つは増田の投入だろう。この男がパスワークをけん引し、リズムを作ることで大宮に攻撃の時間帯が増えていった。すると、57分に増田のCKから高橋が落としたボールを曽ヶ端がはじいたところに家長が詰めて大宮が同点に追いつく。鹿島としては嫌な失点の仕方だったが、すぐに取り返す。右サイドからあげた土居のクロスを大宮DFがクリアし損ねたルーズボールをカイオが見事なボレーでゴールに叩き込み、1分で勝ち越しに成功した。

 これで再び流れを掴みかけた鹿島だったが、この後大宮が4バックに変更したことで再び流れを明け渡してしまう。全体的に高い位置を取り、ボールを握り出した大宮が鹿島を押し込むと、68分に再びCKのこぼれ球をズラタンが押し込んでまた同点に追いついたのだった。この後、鹿島は本山、梅鉢、豊川を投入し、攻勢を強め、特に豊川が入った後はほぼ鹿島ペースだったのだが、勝ち越しゴールが奪えずに引き分けで試合を終えた。

 2試合連続の引き分けとなったわけだが、選手たちが話すようにこの2試合の内容は悪くない。大宮戦に限って言えば、チャンスは作れているし、失点もセットプレーからとは言え不運な面があったのも事実だ。ただ、この状態が続くのがまずいのもまた事実。首位浦和との勝点差は9に開き、何より天皇杯含め再開後まだ勝利がない。これが続けば泥沼化してもおかしくはないのだ。この状態を解決するには、浦和戦での絶対勝利が求められる。前半戦最終戦は今季の鹿島の一つの試金石となるだろう。

[試合記録]
2014 Jリーグ ディビジョン1 第16節
2014年7月23日(水) 19:00キックオフ
県立カシマサッカースタジアム 入場者数:8840人

鹿島アントラーズ鹿島アントラーズ
-2大宮アルディージャ大宮アルディージャ

[得点経過]
・34分 <鹿島>ダヴィ(今季6点目 アシスト:遠藤康)
・57分 <大宮>家長昭博(今季4点目)
・58分 <鹿島>カイオ(今季3点目)
・68分 <大宮>ズラタン(今季4点目)

[ハイライト動画]


[警告・退場]
55分 <大宮>増田誓志(警告
74分 <鹿島>西大伍(警告 累積1枚目)

[フォーメーション]
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[出場記録・寸評]
<鹿島>
GK
21曽ヶ端準 5 ハイボールの処理は悪くなかったが、1失点目は彼のミスが原因。
DF
22西大伍 6 2失点目の時に高橋に競り負けた以外は充実のプレー。
23植田直通 前半の安定感を後半も見せたかった。
15昌子源 後半は裏を突かれることもあったが、崩されることはなくムルジャを封じた。 
16山本脩斗 6 左サイドから上手く押し上げていたが、後半はやや押し返されたか。

MF
20柴崎岳 6.5 キレのあるドリブルは誰も止められなかった。 MOM
40小笠原満男 5.5 時間の経過と共に位置が下がり、最後はバテていた。 
→MF27梅鉢貴秀(77分) 5.5 ミスはなかったが、ビルドアップとバランスに難があり、柴崎を押し上げられず。
25遠藤康
 5
1アシストこそしたが、シュート、パス共に精度を欠いた。
→FW19豊川雄太(86分) - 好調さを見せつけ、得点の匂いを感じさせた。もっと長い時間見たかった。
33カイオ
 6.5
攻撃のリズムを良化させ、見事なボレーでゴールも挙げた。
→MF10本山雅志(77分) 5.5 プレー位置が低く、相手の脅威になったとは言い難かった。
28土居聖真 5.5 決定機を決められず。やや思い切りが足りないか。
FW
11ダヴィ 6 体のキレが良く、得点以外にも相手DF陣にとって嫌な動きを続けた。

監督
トニーニョ・セレーゾ 5 明らかに遠藤→豊川の交代が遅かった。

<大宮>
GK

21江角浩司 5.5
DF
27今井智基 5.5
2菊地光将 5.5
17高橋祥平 6
30渡部大輔 5.5
MF
4橋本晃司 5
→MF38増田誓志(54分) 6.5
22和田拓也 5
→DF34片岡洋介(83分) -
10渡邉大剛 5.5
→FW28富山貴光(89分) -
41家長昭博 5.5
FW
8ムルジャ 5.5
11ズラタン 6
監督
大熊清 5.5

<主審>
家本政明 
5.5 遠藤のシュートをゴールキックとジャッジしたシーン以外は悪くなかった。